01. 告白

 DA本校中等部男子トップの俺と、女子トップの彼女。絵に描いたような物語の可能性。ああそれなのに、視線を合わせることすらままならない。



 (万丈目と明日香)






02. 嘘

 彼はひどい嘘つきだった。だが、僕もひどい嘘つきだ。いずれ敵対することになるかも知れない。それまではお互い、いつまでも嘘つきのまま。



 (アモンとオブライエン)






03. 卒業

 入学式のとき、俺たち三人だけがこの制服を纏って、隣り合わせの席に座った。そして、今。俺だけがこの制服を纏って、卒業証書を受け取る。



 (亮と吹雪と優介)






04. 旅

 十と少しで今の親分に拾われた。数年してから学校にも通った。そこから一転、お前の引き出しに落ち着いた。な、笑っちゃうような道筋だろ。



 (チックと万丈目)






05. 学ぶ

 今日もまた、挨拶を交わす機会すら得られなかった。彼は僕の同級生にして友人である。しかし不思議なほどに、席を並べて学んでは、いない。



 (空野と剣山)






06. 電車

 電車に乗り馴れていない子供は窮屈と退屈に襲われる。けれども俺はそうじゃなかった。ユベルと一緒に、流れていく景色を楽しんでいられた。



 (ユベルと十代)






07. ペット

 おいおいジェームス、何もシャワールームにまでペットを連れ込むこと、ないんじゃないか。NO! 彼女はペットじゃあない、俺のファミリーさ。



 (ジムとカレンとサウス)






08. 癖

 その日の朝、翔は黄色いジャケットを探した。万丈目は黒いコートを探した。すぐ後に青いコートを視界へ入れて、ようやく、間違いに気付く。



 (翔と万丈目と四期制服)






09. おとな

 人間は誰しもやがて、大人になる。いや、具体的な変化などなくとも、子供であることをやめなくてはならない。そして、何処かへ。この足で。



 (十代と旅路)






10. 食事

 珍しく立ち寄った購買でティラノ剣山に出くわした。気がつけば片手にはドローパン。並んで腰掛けて齧る。そういえばこいつ、僕と同い年か。



 (エドと剣山)






11. 本

 胃袋のなか。どんな本にも描かれていないような領域に、僕がいる。ああ、今、猫を苦手とする元同僚が、悲鳴をあげて逃げていってしまった。



 (大徳寺とクロノス)






12. 夢

 夫の夢は、染み付かせた硝煙の匂いと手を切ること。息子の夢は、その硝煙の中に独り立ちすること。そして私はそんな彼らの、結実と幸福を。



 (オブライエン母と夫と息子)






13. 女と女

 へたな男よりもずっとかっこいいひとなの。昔からですわ。でもね、たまには息抜きもして、しあわせでいてほしいの。それも、昔からですわ。



 (ジュンコとモモエと明日香)






14. 手紙

 『兄さんたち、お元気ですか。俺はいま……』そこまで書いてから、便箋を丸める。天上院くんみたいにはいかない。翔みたいにも、いかない。



 (万丈目と兄)






15. 信仰

 一、十、百、千、万丈目サンダー。「……お前だけ顔が笑ってる」「え、なんかダメだったか?」貴様はどうしたって俺の信奉者にはならない。



 (万丈目と十代)






16. 遊び

 「そんなお遊び止めちまいなよ。親父さんみたいな強者になりたいなら」ところがこれは他ならぬ、その男の教え。ただの遊びなんかじゃない。



 (傭兵と昔のオブライエン)






17. 初体験

 向かい合う彼が、昨日までには記憶の中にもいなかっただなんて。まるで信じられない。こんな風にして誰かを見たのは、初めてのことだった。



 (ヨハンと十代)






18. 仕事

 決して退くようではならない。率先する者でなければならない。わたしの身体は、導くために存在をなしている。教師という名の一生の仕事。



 (クロノスと教師人生)






19. 化粧

 デッキに伴い仮面を被れば、別人へと変身する。しかしどうやら彼にはなれない。オレは考えた。彼が、彼こそが仮面の騎士なのではないかと。



 (神楽坂とアモン)






20. 怒り

 提案を言葉にして放つと、背後の男は明らかに感情を歪めた。成すべき責務のためだ。理解してくれ、この俺と同じく、たったひとりの戦士よ。



 (フリードとオブライエン)






21. 神秘

 アマゾネスがどうとか言うけれど、少なくともわたしは神秘ではない。時にはお前にほだされる。一喜一憂だってする。神秘なんかじゃあない。



 (タニヤと三沢)






22. 噂

 入学して程なく、おまえ噂になっているぜと言われた。デュエルの腕。独り言のおまじない。あれ、呪文なんかじゃなくて会話なんだけどなあ。



 (ヨハンとアークティック)






23. 彼と彼女

 人智の及ばぬ能力を伴い、兄妹は寄り添って歩んできた。僕とて彼らと微笑みを交わす。しかし、真実の意味での共鳴には至るものであろうか。



 (エドと斎王兄妹)






24. 悲しみ

 こんなに沢山の人影があるのに、どこにもあなたを確かめることができない。偽りにあなたの名を求めれば、その深みは、より増していった。



 (オネストと藤原)






25. 生

 生というものが潰えていく、確かな感覚をこの身に纏う。竦んでいる暇はなかった。まだ、彼が生きている。この意志を。引き渡さなければ。



 (ジムとオブライエン)






26. 死

 いつの日か、十代くんはアビドスのところへ行くのだろうか。僕は今でもここにいるけど。なんて気にしてる内には、成仏できそうにないにゃ。



 (大徳寺と十代)






27. 芝居
 
 兄上に会いたいと繰り返されるので、DAの休暇はもうすぐですよと教えて差し上げた。するとシド様は心より喜ばれる。滑稽なる道化は私だけ。



 (エコーとシドとアモン)






28. 体

 大人びているとは言われても、お姉さんたちに混じれば貧相に見える。仕方のないことだった。それでも私の恋は、やっぱりくやしいって言う。



 (レイとブルー女子寮)






29. 感謝

 こうして再び巡り会うに至った。当然の運命ながら、なんという幸福であろうか。彼のその愛に締め上げられて実感する。有り難う、僕の十代。



 (ユベルと十代)






30. イベント

 白と黒とに塗り分けられたステージ。因縁の二人の再戦だ。しかしこういう演出もどうかと、おい、聞いてるのか万丈目。発声練習は遠慮しろ。



 (エド・フェニックスと万丈目サンダー)






31. やわらかさ

 あの子を育てることにおいて、私は無力だった。無骨な指先でおそるおそるに頬を撫でたことを覚えている。記憶だけは決して、嘘をつかない。



 (コブラとリック)






32. 痛み

 俺のこの痛みすらも、きっとマスターのためにあるのだと思う。するとユベルは首を傾げて言った。オネスト、愛だったら交わし合わなくちゃ。



 (ユベルとオネスト)






33. 好き

 エビフライ。納豆。居眠り。一人きりの屋上。だれか。デュエル。俺の好きなもの。得られたもの。失ったもの。即ち、この身体が愛するもの。



 (覇王と十代)






34. 今昔(いまむかし)

 仕事をしているときの母さんは輝いている。父さんと別れる前よりもずっと、若々しさに満ち足りている。そこに僕の入り込む余地はなかった。



 (マルタンとジョセフィーヌ)






35. 渇き

 僕の国では水みたいなものだって言う。喉が乾けば欲しくなるから。と、マルっちがワインを恋しがる。ああ、そういえば三つも、歳上なんだ。



 (レイとマルタン)






36. 浪漫

 明日香、ロマンを忘れてはならないよ。それは魂の衰えともなりうる。解ったから、兄さん、真冬の海はよして。魂よりも体の方が危ないもの。



 (吹雪と明日香)






37. 季節

 秋の紅葉冬の雪、春の桜に夏の海。日本って凄いな。え、本校には雪が積もらないって? アークティックに来てみろよ、飽きるほど見られるぜ!



 (ヨハンと本校)






38. 別れ

 戦いはおそらく、この目に映らぬ場所で行われたのだと思います。別れの言葉も許されなかった。けれどもあなたは、確かに私の勇者様でした。



 (海神の巫女とオブライエン)






39. 欲

 闇が私に手招きをする。導かれながらふらふらと、歩む体は、ひとつだけ。巻き込みはするまい。彼には彼の選択が、彼の幸福が、あるのだから。



 (斎王とエド)






40. 贈り物

 小包を送り出してから、ヨハンへの連絡手段も確保した。暫しは俺だけが動いていればいい。奴へ向けて、出来うるすべてを。決して惜しむな。



 (オブライエンと十代)

 











 ルールは『65文字まで』ということで、 文章修行家さんに40の短文描写お題 様からお題を拝借しました。
  



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